金融庁の平成28事務年度 金融レポートによると、家計金融資産の運用リターンによる残高の増加率は、日本が1.20倍・米国が2.45倍との結果です。
このことから、米国での投資効果の高さがうかがえます。
だからといって、そのまま米国株に投資するのは必ずしもかしこい方法ではありません。
効率的な投資にはNISAを利用することがカギといえます。
今回は、NISAで米国株投資するメリット・デメリットをご紹介します。
また、米国株投資には投資信託の活用もおすすめですので、その特徴もあわせてお伝えします。
今後の動向によって、情報発信・更新を随時行う予定ですので、引き続きマネカレをご利用ください。
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NISAとは
NISAとは、2014年から始まった少額投資非課税制度のことです。
投資で得られる運用益にかかる税金が非課税になります。
通常、株式や投資信託の運用益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座で資産運用した場合は、一定期間内、一定の投資額内において税金がかかりません。
NISAには、次の一般NISA・つみたてNISA・ジュニアNISAの3種類があり、種類別に非課税となる投資枠や期間が異なります。
NISA (一般NISA)
NISA (一般NISA)の基本情報 | |
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1年間に投資できる上限額 (非課税投資枠) | 120万円 |
非課税期間 | 最長5年 |
非課税枠の上限 | 600万円 |
投資対象商品 | 上場株式・海外株式・投資信託など |
投資可能期間 | 2014年~2023年 |
NISA (一般NISA)は、日本に住んでいる20歳以上の人であれば誰でも利用可能です。
口座開設可能数は1人1口座までです。
つみたてNISA
つみたてNISAの基本情報 | |
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1年間に投資できる上限額 (非課税投資枠) | 40万円 |
非課税期間 | 最長20年 |
非課税枠の上限 | 800万円 |
投資対象商品 | 金融庁選定の投資信託約200銘柄 |
投資可能期間 | 2018年~2042年 |
一般NISAとつみたてNISAを同時に利用することは出来ません。
どちらか選択する必要があります。
ジュニアNISA
ジュニアNISAの基本情報 | |
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1年間に投資できる上限額(非課税投資枠) | 80万円 |
非課税期間 | 最長5年 (~2023年まで) |
非課税枠の上限 | 400万円 |
投資対象商品 | 上場株式・海外株式・投資信託など |
投資可能期間 | 2016年~2023年 |
利用できるのは日本在住の未成年者 (0歳~19歳)ですが、運用管理するのは口座開設者本人の両親や祖父母などの親権者です。
一般NISAやつみたてNISAのように自由な引き出しができず、ジュニアNISAは口座開設者本人が18歳になるまで資金の引き出しができません。
NISAの利用者は増加傾向
投資で得られる利益が非課税になるNISA制度ですが、利用者は増加傾向にあります。
金融庁の調査資料からNISA口座開設数の変化を見てみましょう
2014年1月
(制度導入時点)2017年12月末 2020年12月末 口座数 口座数 口座数 総数 492万4,663 1,099万2,733 1,523万2,308 20代 13万7,580 46万8,604 101万8,908 30代 32万1,576 112万8,502 207万9,315 40代 55万9,030 169万5,209 261万8,763 50代 78万8,778 187万4,748 263万6,934 60代 147万9,943 263万684 283万8,048 70代 121万5,185 218万952 272万1,391 80歳以上 42万2,571 101万4,034 131万8,949
2020年12月末の口座数は2014年の制度導入時と比較すると約3倍になっており、NISAの利用者が大幅に増えていることがわかります。
20代~40代の利用者はとくに増えており、若い世代が将来を見据えた資産運用に力を入れている証拠といえるでしょう。
NISA口座開設の目的
NISA口座を開設した人たちは、どんな目的を持っているのでしょうか?
NISA口座開設の目的を金融庁の資料から見てみましょう。
世代を問わない全体の回答 特に目的はないが金融機関の担当者に勧められたから 27.5% 余剰資金の運用のため 21.8% 老後の資金を備えるため 20.0% 預貯金だけでは貯蓄として不十分だから 14.3% 日々の生活費の足しにするため 6.1% レジャーや旅行・趣味に使う資金を貯めるため 5.1% 住宅購入資金を蓄えるため 0.8% 子どもの教育費を蓄えるため 0.5% その他 4.0%
世代を問わない全体では金融機関の担当者に勧められたからが最も多い結果です。
次いで余剰資金の運用・老後資金・預貯金だけでは不十分と続きます。
ここから老後資金と預貯金だけでは不十分と回答した人たちを世代別に見てみましょう。
老後の資金を蓄えるため
(世代別の回答)20代 2.4% 30代 7.7% 40代 16.9% 50代 25.4% 60代 22.8% 70代 22.7%
20代30代の割合は少ないものの、40代以降は一気に増えています。
40代に入れば親の介護がはじまる人も出てきます。
親の姿を通じて老後を自分のこととして捉えやすい年代です。
そこで蓄えを充実させるために資産運用に取り組む人が多くなっているものと考えられます。
預貯金だけでは貯蓄として不十分だから
(世代別の回答)20代 22.0% 30代 23.2% 40代 11.8% 50代 16.5% 60代 11.6% 70代 13.0%
20~30代がそれぞれ20%を超えていることから、懐事情の厳しさがうかがえます。
現在はほぼゼロ金利時代といわれていることもあり、お金を預金口座にそのまま置くのではなく、投資で増やそうと考える人が多い証拠といえるでしょう。
投資へのイメージがポジティブに変化
金融庁の調査によると、NISA口座開設後に51.5%の人が投資に対するイメージが変わったと回答しています。
では、投資に対するイメージが変わったと回答した人たちは、どのような変化を感じたのでしょうか?
NISA口座開設後の投資イメージの変化
(イメージが変わった者ベース)大きな資金がなくても、少額から投資がはじめられることがわかった 49.1% 長期投資や分散投資を意識するようになった 26.8% 預貯金だけではなく、投資を通じた財産形成の必要性を感じるようになった 25.1% 投資は難しいものだと思うようになった 21.3% 投資が身近に感じられ、投資へのハードルが下がった 20.3% 損失が出たことで投資の怖さを実感した 19.3% 投資が怖いものではなくなった 5.9% その他 0.9%
少額からはじめられることがわかったが50%近くを占めています。
実際に投資をはじめてみると自分にもできるものと身近に捉える人が多くいるようです。
NISAで米国株を買うメリット
米国株を購入する際に、なぜNISAを利用すると良いのでしょうか?
考えられるメリットは次の3つです。
- 配当金や譲渡益が非課税
- 非課税投資枠を使いやすい
- 有名企業の株主になれる
配当金や譲渡益が非課税
NISA口座で米国株を購入すると、利益が発生したとしても税金はかかりません。
つみたてNISAのみ米国株(個別銘柄)は購入できませんが、一般NISAとジュニアNISAなら米国株 (個別銘柄)も投資対象商品に含まれています。
一般NISAなら年間120万円以内、ジュニアNISAなら年間80万円以内で購入した米国株の利益なら非課税となります。
もし120万円 (一般NISAの場合)の非課税投資枠を使い切っても、来年になれば120万円の枠は復活します。
また、一般NISAとジュニアNISAはどちらも非課税期間が最長5年間です。
つまり、一般NISAは最大600万円まで、ジュニアNISAは最大400万円まで非課税で投資できるのです。
非課税投資枠を使いやすい
米国株は1株から購入できるため、非課税投資枠を使いやすいこともメリットです。
日本は基本的に100株単位での取引となるため、非課税投資枠を一気に使い切ってしまう可能性があります。
1株から購入できる米国株なら、気になる銘柄をいくつも購入できます。
非課税投資枠をまとめて消費することもないため、使い勝手の良さが魅力です。
ただし、証券会社によっては売買単位を10株以上・100万円以上など、制限を設けていることがありますのでご注意ください。
有名企業の株主になれる
米国には、GoogleやAmazon・Facebook・Apple・Microsoftといった有名企業が多く存在します。
米国株へ投資する場合は、日本にいながらこれら有名企業の株主になれるのです。
Googleなどは米国企業の時価総額ランキングでも上位に位置しており、今後の成長も期待されています。
有名企業であれば情報収集もしやすいため、投資しやすいこともメリットです。
米国株への投資を検討しはじめたら、コカ・コーラなど日本人にも馴染みの深い米国の有名銘柄を購入するのも良いのではないでしょうか。
NISAで米国株を買うデメリット
ここまでメリットを紹介してきましたが、デメリットもあります。
NISAで米国株を購入する際は、以下の3つのデメリットに注意してください。
- 値幅制限がない
- 損益通算や繰越控除は不可
- 外国税額控除が利用できない
値幅制限がない
日本には急激な株価変動によって大きな損失や混乱を生まないようにストップ高・ストップ安があります。
しかし、米国株には日本のような値幅制限がありません。
1日のなかで株価はいくらでも動くため、大きな損失を出す可能性があります。
とはいえ、取引を一時的に中断させるサーキットブレーカー制度は用意されています。
サーキットブレーカー制度とは、過熱した投資家を一旦落ち着かせて、正しい相場に戻すために取引所が発動させる措置のことです。
ただし、株価が上昇している場合は利益が大きくなるため、値幅制限がないことがメリットとなる場合もあります。
そのほか、米国株にはストップ安がないことで、値幅制限がある場合と比べて下落局面が短期間で終わることが多いとも言われています。
損益通算や繰越控除は不可
NISAで米国株を購入すると、損益通算ができず、繰越控除も適用されません。
一般の投資の場合、銘柄Aで10万円の利益が発生し、銘柄Bで10万円の損失が出たとします。
すると10万円の利益と10万円の損失を相殺できます。
利益は0円となり税金はかかりません。
しかし、NISAを利用するとこのような損益通算はできません。
先程の例だと、銘柄BをNISA口座で購入していた場合、損益通算できずに銘柄Aの利益10万円に対して税金がかかります。
同じく、一般の投資の場合、損失を翌年以降に繰越して利益から控除できる繰越控除という制度を利用できます。
損失を繰越せるのは最長3年間です。
ところが、NISAは繰越控除の対象外とされています。
どちらも一般の投資では認められているものの、NISAでは利用できないことに注意してください。
外国税額控除が利用できない
NISAを利用しない投資の場合、米国株で利益が発生すると、配当益に対しては米国と日本それぞれで税金がかかります。
ただ、これでは米国と日本の二重課税となります。
この場合、確定申告で外国税額控除を申請すれば、米国分の税金は返ってきます。
しかし、NISAを利用していると国内では税金がかからないため外国税額控除が適用されません。
そのため、配当益に対して米国の10%の税金がかかります。
米国株を買うなら投資信託
個人でNISAを利用して米国株に投資する場合、デメリットの損益通算や外国税額控除については難しく感じることもあるでしょう。
そんな方には、投資信託で米国株に投資する方法をおすすめします。
投資信託の主な特徴は、次の3点です。
- 分散投資でリスクを抑えられる
- プロが運用
- アクティブ型なら指数以上のリターンが得られる可能性も
分散投資でリスクを抑えられる
米国株は1株から購入できるため、分散投資しやすい側面があります。
実は、投資信託にも同じ分散投資の効果が期待できるのです。
投資信託は、株式や不動産、債券など、さまざまな資産が組み込まれた金融商品です。
そのため1銘柄購入すれば、それが分散投資につながります。
ここで、投資の格言をひとつご紹介します。
「卵は一つのかごに盛るな」
これは、割れやすい卵をひとつのかごに入れれば落とすとすべて割れてしまうため、投資でもひとつの銘柄に偏らせるのではなく分散させよ、という教えです。
投資信託は1銘柄からでも分散投資効果が期待できるため、初心者向きともいえるでしょう。
さらに、複数の銘柄を組み合わせれば、より高い分散効果を得ることも可能です。
プロが運用
米国株を個人で購入すれば、運用するのは自分自身です。
しかし、投資信託は投資の専門家によって運用されます。
個人が投資で利益を発生させるには、豊富な知識や経験が必要です。
初心者でも知識や経験は身に付けられますが、時間がかかるでしょう。
その点、投資信託は専門家が運用するため、知識や経験を身に付ける時間を節約できるという大きなメリットがあります。
また、投資信託なら、定期的に発行される運用報告書によって運用状況を把握できることも特徴です。
はじめて投資する場合は、専門家が運用してくれる投資信託を利用したほうが、リスクを軽減させられるでしょう。
アクティブ型なら指数以上のリターンが得られる可能性も
投資信託には2種類の運用方法があります。
インデックス型とアクティブ型です。
インデックス型は、米国のS&P500(米国の代表的な株価指数)・日本の東証株価指数(TOPIX)や日経平均株価などの指数と連動することを目標にして運用するタイプです。
指数と同じくらいの運用結果が出せるように運用されます。
アクティブ型は、指数や市場全体以上の運用結果を目指して運用するタイプです。
インデックス型よりも積極性のある運用方法といえます。
その分、上下ともに市場平均よりも大きな変動となる可能性があることにご注意ください。
コストは、投資の専門家による銘柄の調査・分析を行う分、アクティブ型のほうが高めに設定されていることが特徴です。
投資目的や資産状況に合わせて運用方法を選びましょう。
投資経験者は投資信託を重視
最後に、投資経験者がどんな金融商品を保有しているか、金融庁の資料をもとにご紹介します。
投資経験者がリスク性金融商品のなかで、現在保有しているものの上位5つは以下のとおりです。
(複数回答)
株式 53% 投資信託 44% 貯蓄性保険 38% 外貨預金 15% 従業員持株 6%
投資信託は株式に次いで2番目に多い結果でした。
投資=株式とイメージする人は多いかもしれませんが、投資信託の割合の高さは意外だったのではないでしょうか。
この調査結果から、投資経験者は株式だけでなく投資信託も重視していることが分かります。
また、積立投資についての調査結果も見てみましょう。
投資経験者が積立投資を行っている、または行ったことがある金融商品の上位5つは次のとおりです。
(複数回答)
投資信託 34% 貯蓄性保険 25% 株式 21% 従業員持株 9% 外貨預金 8%
投資信託は貯蓄性保険や株式よりも割合が高く、投資信託が積立投資に向いている金融商品と見られていることがわかります。
投資信託は投資経験者の多くが保有しています。
投資初心者は、まずは米国の個別株よりも手軽な投資信託からはじめてみるのも良いのではないでしょうか。
まとめ
NISAで米国株を購入するメリットには、利益が非課税になることや非課税投資枠を使いやすいことなどがあります。
対してデメリットは、値幅制限がないことや損益通算できないことなどです。
最初から米国株を購入するのは自分には難しそう……。
と感じた方は、投資信託からはじめてみましょう。
アクティブ型を選べば指数以上の利益を得られる可能性があります。
銘柄選びでつまずきそうな場合は、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)に相談してみませんか?
IFAは金融機関側ではなく、あなたの利益を最優先に考えてアドバイスしてくれます。
かしこく資産運用するためにも、ぜひ活用してみてください。