投資信託で得られる主な利益は譲渡益と分配金の2つですが、分配金は投資信託の保有中に得られる利益です。
ただ、投資信託には分配金ありと分配金なしのタイプがあります。
また、分配金と一口にいっても、 受け取る分配金は普通分配金と特別分配金のどちらかに分かれる等、その中身はやや複雑です。
そこで今回は、投資信託の分配金についてわかりやすく解説します。
分配金を正しく理解すれば、銘柄選びの際にも役立ちますよ。
投資信託の分配金とは
分配金とは、投資信託の運用で得た利益のなかから、決算日ごとに保有口数に応じて投資家に支払われるお金のことです。
金額や支払い頻度(毎月や数カ月ごと等)は銘柄ごとに異なります。
分配金は信託財産(投資信託の資産)から支払われるため、支払い後は基準価額(投資信託の値段)や純資産総額(投資信託の規模をあらわすもの)がその分だけ下がることが特徴です。
分配金を受け取るには、決算日にその投資信託を保有している必要があります。
交付目論見書や運用レポートを見れば、決算日や分配金の支払い状況を確認できます。
PWM日本証券のホームページ上にも掲載されていますので、ぜひチェックしてみてください。
また、詳しくは後述しますが、分配金は中身がやや複雑なため簡単に分かるよう特徴を表にまとめました。
分配金
分配金の支払い | メリット | デメリット |
---|---|---|
あり | 定期的な現金収入になる | 再投資の際に手数料がかかる |
なし | 複利効果が期待できる | 解約するまで利益を受け取れない |
種類 | 税金 | 判断基準 |
普通分配金 | あり | 決算日の基準価額が個別元本を上回る |
特別分配金(元本払戻金) | なし | 決算日の基準価額が個別元本を下回る |
預貯金の利息や株式の配当金との違い
投資信託の分配金は、預貯金の利息や株式の配当金とは内容が異なります。
預貯金の利息は、金融機関の資産の一部からあらかじめ決められた利率で定期的に支払われるものです。
支払われても元本は変わりません。
株式の配当金は、株式を発行した企業が支払うものです。
企業が得た利益の一部から支払われます。
企業が配当金を増やすと株式を購入したい投資家も増えて、株価(元本)が上昇する場合もあります。
投資信託の分配金はその投資信託の中で運用されている資産から支払われるものです。
支払われた分配金が特別分配金の場合は、特別分配金の分だけ個別元本(投資信託を購入したときの基準価額)は引き下げられます。
特別分配金については後述していますので、分配金は2種類に分けられるの章をご覧ください。
支払い機関 | 元本の変動 | |
---|---|---|
預貯金の利息 | 金融機関 | なし |
株式の配当金 | 株式を発行した企業 | あり |
分配金 | 投資信託の運用会社 | あり |
分配金「あり」と「なし」がある
投資信託には分配金があるタイプと、ないタイプがあります。
ただ、分配金があるタイプでも、運用状況によっては支払われないケースもあります。
そして、分配金がないタイプだからといって 単純に「良くない投資信託」とはいえません。
分配金がないタイプは運用で得た利益を再投資に回しているためです。
つまり分配金ありとなしでは、利益の扱い方が異なるのです。
なお、分配金ありの投資信託は、分配金の受け取り方法を最初に受け取り or 再投資から選ぶことができます。
(証券会社等によって取り扱いが異なるので注意)
「分配金あり」のメリット・デメリット
ここからは分配金ありと分配金なしそれぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。
まずは分配金ありのメリット・デメリットからです。
- メリット|定期的な現金収入になる
- デメリット|再投資の際に手数料がかかる
メリット|定期的な現金収入になる
分配金ありのタイプは、分配金が毎月や年1回等、定期的に指定口座へ入金されます。
お小遣いをもらうような感覚が楽しめますし、投資で利益を受け取っていると感じることもできるでしょう。
受け取った分配金は、生活費や新たな金融商品への投資等、自由に使えます。
デメリット|再投資の際に手数料がかかる
一度受け取った分配金は同じ投資信託に再投資しても構いません。
しかし、その際は購入時手数料がかかります。
分配金なしのタイプは利益が自動的に再投資されますが、こちらは購入時手数料がかかりません。
そのため、同じ銘柄に再投資する点においては、手数料分を新たに負担することがデメリットになると考えられます。
「分配金なし」のメリット・デメリット
分配金なしのタイプにはどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
考えられるメリット・デメリットは次の2つです。
- メリット|複利効果が期待できる
- デメリット|解約するまで利益を受け取れない
メリット|複利効果が期待できる
複利とは、運用で得た利益と投資元本の合計から利回りが発生することです。
分配金なしのタイプは、再投資の際に購入時手数料の負担をかけることなく、この複利効果を享受することが期待できます。
投資期間が長期になるほど複利効果は大きくなるため、効率的に資産運用するためには覚えておきたい要素のひとつと考えられます。
ちなみに複利の反対は単利ですが、単利は投資元本のみから利益が発生することです。
年間利回りが同じであれば、単利より複利のほうが得られる利益は大きくなります。
ただし、投資信託の基準価額が下落を続けるような局面においては、マイナスの複利効果が発生する可能性に注意が必要です。
デメリット|解約するまで利益を受け取れない
分配金なしのタイプは利益が自動的に再投資に回されるため、投資信託を解約するまで利益を現金で受け取れません。
もし途中で投資信託の運用成績が悪くなれば、利益を受け取れないだけでなく基準価額が下がって損失を出す可能性もあります。
また、再投資に充てられるのが税金が差し引かれた金額になることもデメリットになると考えられます。
分配金が自動的に再投資に回されても、税制上は一度受け取ったものとみなされるため税金がかかるのです。
税金分の負担を少なくしたい場合は、支払い頻度の少ない銘柄を検討してみてください。
分配金は2種類に分けられる
分配金を受け取ると、分配金には所得税・住民税等を合わせて20.315%の税金がかかります。
しかし、分配金には税金がかかる種類と税金がかからない種類の2つがあります。
これを判断するポイントは個別元本と決算日(分配金支払い後)の基準価額です。
この点を踏まえながら、2つの分配金を詳しく見ていきましょう。
- 税金あり|普通分配金
- 税金なし|特別分配金
税金あり|普通分配金
決算日の基準価額が個別元本より高い場合は、普通分配金となります。
たとえば個別元本が1万円で決算日の基準価額が1万2,000円なら、支払われた分配金は普通分配金です。
(分配金額が2,000円以内であることが条件)
そして普通分配金は運用利益から支払われるため、20.315%の税金がかかります。
税金なし|特別分配金
決算日の基準価額が個別元本より低い場合は、特別分配金となります。
特別分配金は元本払戻金とも呼ばれます。
たとえば個別元本が1万円で決算日の基準価額が8,000円であれば、支払われた分配金は特別分配金です。
特別分配金は実質的に投資元本の一部を取り崩して支払われるもののため、投資家は利益を受け取っているとはみなされず税金はかかりません。
また、分配金支払い後の個別元本は、特別分配金の分だけ少なくなることが特徴です。
分配金の計算例
では、実際に普通分配金や特別分配金となった場合に、どのくらいの金額を受け取れるのか3つのケースで見てみましょう。
- 普通分配金となるケース
- 特別分配金となるケース
- 普通分配金&特別分配金の両方となるケース
以下の条件を元にそれぞれのケースをご紹介します。
- 決算日の基準価額=1万2,000円
- 分配金=1,000円
普通分配金となるケース
- 個別元本が8,000円の場合
決算後の基準価額1万2,000円は個別元本8,000円より高いため、分配金1,000円は普通分配金とみなされます。
したがって、税金がかかります。
受け取れる分配金
1,000円-(1,000円×20.315%)=797円 (四捨五入)
特別分配金となるケース
- 個別元本1万4,000円の場合
決算後の基準価額1万2,000円は個別元本1万4,000円より低いため、分配金1,000円は特別分配金とみなされます。
したがって、税金はかかりません。
受け取れる分配金
- 1,000円
普通分配金&特別分配金の両方となるケース
- 個別元本1万2,300円の場合
決算後の基準価額1万2,000円が個別元本1万2,300円を下回っている300円の部分は特別分配金となり、残り700円の部分は普通分配金とみなされます。
つまり、分配金1,000円のなかで普通分配金と特別分配金に分けられます。
受け取れる分配金
300円(税金はかからない)+700円-(700円×20.315%)=858円(四捨五入)
NISAなら税金分も受け取れる
分配金に税金がかかることは上述の通りですが、NISA口座を利用すれば税金分も受け取れるようになります。
そこで最後は、NISAの概要と注意点をご紹介します。
NISAはどんな制度?
NISAは、一定の投資枠内で一定期間、投資利益に税金がかからなくなる制度です。
通常の投資では投資利益に税金がかかりますが、NISA口座を利用すれば投資信託の分配金や譲渡益 に税金がかからなくなります。
通常よりも税金分がお得になるため、資産運用の効率化に役立つと考えられます。
NISAで利用できる投資枠や、投資利益に税金がかからなくなる期間(非課税期間)はNISAの種類ごとに異なることが特徴です。
投資枠(年間) | 非課税期間 | 利用できる方 | |
---|---|---|---|
一般NISA | 120万円まで | 最長5年間 | 20歳以上 |
つみたてNISA | 40万円まで | 最長20年間 | 20歳以上 |
ジュニアNISA | 80万円まで | 最長5年間 | 0~19歳の方 |
※ジュニアNISAは2023年で制度終了となります。
なお、つみたてNISAで投資できる投資信託は頻繁に分配金が支払われないものが条件のひとつとされています。
そのため、定期的に分配金を受け取りたい場合は、基本的に一般NISAかジュニアNISAを利用するのが良いと考えられます。
分配金の再投資は要注意
分配金の再投資はNISAの投資枠を新たに消費してしまいます。
たとえば一般NISAで投資信託を100万円分購入し、3万円の分配金を得たとしましょう。
このケースで3万円を再投資に回すと、投資枠は新たに3万円が消費されて103万円となります。
また、すでに投資枠をすべて消費している場合の再投資は、NISAの投資枠を利用できません。
その場合は、課税口座での再投資 or 証券総合口座への入金へと切り替わります。
ただし、金融機関によって取り扱い方は異なるため、事前に確認しておきましょう。
まとめ
投資信託に投資すれば分配金を受け取れる可能性があります。
受け取った分配金の使い道は生活費や趣味費、再投資に回す等、人それぞれです。
ただし銘柄によって分配金ありか分配金なしかは 異なります。
それに加え、投資信託では自分が投資したい資産が含まれているかをチェックする必要もあります。
これらを踏まえたうえで投資銘柄を選ぶのは大変です。
投資初心者であれば銘柄選びで挫折してしまうかもしれません。
手軽に銘柄を選びたい場合は、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)に相談してみましょう。
投資のナビゲーターであるIFAを味方に付ければ、スムーズに銘柄を選べるようになりますよ。