NISAを利用すれば投資で得た利益は非課税になりますが、非課税期間はNISAの種類ごとに異なります。それに非課税期間が終了する前に手続きをしなければ、資産運用で損をしてしまうかもしれません。
この記事では、NISAの非課税期間と、非課税期間終了後の金融商品の取り扱い方についてご紹介します。非課税期間を延長できるロールオーバーについても解説しますので、できるだけ損をせずに資産運用したい方は、ぜひご覧ください。
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NISAは運用益が非課税になる仕組み
通常、株式や投資信託といった金融商品を購入して譲渡益や配当金を受け取ると、利益に対して税金がかかります。税率は20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)です。
ところが、NISA口座を開設して金融商品を購入すれば、非課税期間内なら利益が発生しても税金はかかりません。
利益分がお得になるので、効率的な資産運用につなげることを期待できます。
ただし、NISAにはいくつか種類があり、それぞれ非課税期間は異なります。
NISAの非課税期間はいつまで?
NISAの種類と非課税期間は以下のとおりです。
種類 | 非課税期間 |
---|---|
NISA(一般NISA) | 最長5年間 |
つみたてNISA | 最長20年間 |
ジュニアNISA | 最長5年間 |
NISAには非課税期間以外にも異なる点がたくさんあります。
それぞれの特徴を種類ごとに見ていきましょう。
NISA(一般NISA)
NISA(一般NISA)の特徴 | |
---|---|
利用可能な人 | 日本在住の20歳以上の人 |
非課税期間 | 最長5年間 |
非課税投資枠 | 年間120万円 |
非課税投資枠の最大金額 | 最大600万円
(非課税期間5年×非課税投資枠120万円) |
投資可能期間 | 2014年~2023年 |
(※1) | 株式投資信託
国内・海外上場株式 国内・海外ETF ETN(上場投資証券) 国内・海外REIT 新株予約権付社債(ワラント債) |
※1…投資可能な金融商品は金融機関によって取り扱いが異なります。
NISA(一般NISA)は、非課税投資枠が年間120万円と最も多く設定されています。そのため、投資資金に余裕のある人におすすめです。
投資可能な金融商品の種類も豊富なため、比較的自由度の高い取引ができることも特徴です。
つみたてNISA
つみたてNISAの特徴 | |
---|---|
利用可能な人 | 日本在住の20歳以上の人 |
非課税期間 | 最長20年間 |
非課税投資枠 | 年間40万円 |
非課税投資枠の最大金額 | 最大800万円
(非課税期間20年×非課税投資枠40万円) |
投資可能期間 | 2018年~2037年 |
投資可能な金融商品(※1) | 金融庁が定めた基準をクリアした投資信託 約200銘柄(2021年7月現在) |
※1…投資可能な金融商品は金融機関によって取り扱いが異なります。
つみたてNISAは、非課税投資枠が年間40万円と少額に設定されています。投資可能な金融商品が「金融庁の基準をクリアしたもの」に限定されていることも特徴です。因みに一般NISAとの併用はできません。
まとまった投資資金がない人や、投資初心者におすすめの種類です。
ジュニアNISA
ジュニアNISAの特徴 | |
---|---|
利用可能な人 | 日本在住の0歳~19歳の人 |
非課税期間 | 最長5年間 |
非課税投資枠 | 年間80万円 |
非課税投資枠の最大金額 | 最大400万円
(非課税期間5年×非課税投資枠80万円) |
投資可能期間 | 2016年~2023年 |
投資可能な金融商品(※1) | 株式投資信託
国内・海外上場株式 国内・海外ETF ETN(上場投資証券) 国内・海外REIT 新株予約権付社債(ワラント債) |
※1…投資可能な金融商品は金融機関によって取り扱いが異なります。
ジュニアNISAは、NISAのなかで唯一、未成年者を対象とした種類です。
運用は「口座開設者の二親等以内の親族」が行います。つまり、子ども(口座開設者)の両親や祖父母が運用を担当します。口座開設者が18歳になるまで払い出しはできません。
子供の教育資金や就職準備金などの目的のために資産を構築したい方におすすめの種類です。
非課税期間の無期限化を望む声が多い
金融庁がNISAについて行った調査によると、非課税期間に不満を抱える人が多くいることがわかります。
「NISAについて改善が必要な点をお答えください」との質問には、以下のような回答が集まりました。
NISA制度で改善が必要と考える点
(口座開設者ベース、複数回答) |
||
---|---|---|
1 | 非課税期間(5年間)の無期限化、または拡大 | 42.8% |
2 | 制度の恒久化、または延長 | 31.8% |
3 | 年間投資上限額の拡大 | 24.0% |
4 | 特定口座との間での損益通算を認めること | 22.6% |
5 | NISA口座内で取得した金融商品の売却代金の範囲内で、ほかの金融商品の再取得を認めること | 19.1% |
6 | 購入できる金融商品の公社債などへの拡大 | 9.4% |
7 | その他 | 0.6% |
8 | とくにない、わからない | 30.4% |
出典:国民のNISAの利用状況等に関するアンケート調査|金融庁
「非課税期間の無期限化、または拡大」との回答が最も多い結果です。非課税期間は一般NISAとジュニアNISAが最長5年間ですが、多くの人は資産運用の期間としては短いと感じているようです。
非課税期間が短ければ複利効果も少なくなると予想されるため、無期限化を望む声が多いものと考えられます。
では、「非課税期間の無期限化、または拡大」と回答した人たちを、年代別にも見てみましょう。
「非課税期間(5年間)の無期限化、または拡大」と回答した人たちの世代別割合 | |
---|---|
20代 | 52.4% |
30代 | 51.4% |
40代 | 45.6% |
50代 | 42.0% |
60代 | 39.1% |
70代 | 41.4% |
出典:国民のNISAの利用状況等に関するアンケート調査|金融庁
年代が若くなるほど割合が高くなっています。20代~40代は結婚や出産、育児、マイホーム購入など、まとまった資金が必要なライフイベントの多い年代です。
そのため、非課税で資産運用のできるNISAには期待する面が多く、「非課税期間をより長く」と希望する声がよく聞かれるものと考えられます。
非課税期間終了後はどうする?
購入した金融商品を保有し続けた場合、非課税期間が過ぎたらどうすれば良いのでしょうか?
期間終了後の金融商品の取り扱い方は次の3種類です。
- 非課税期間内に売却する
- 通常(課税)口座に移管する
- ロールオーバーする
それぞれを詳しく見ていきましょう。
非課税期間内に売却する
保有している金融商品を非課税期間内に売却すれば、利益が発生していても税金はかかりません。
非課税期間内に「今が高値でその後下落する」と判断した場合は売却したほうが良いかもしれません。何らかの理由で手元に資金が必要になった際も同様です。
ただし、売却した分の非課税投資枠は再利用できないため注意してください。
また、長期投資の観点からすれば、保有し続けたほうが「非課税」のメリットを活かせる可能性があります。
通常(課税)口座に移管する
通常(課税)口座とは、投資利益に対して税金がかかる口座のことです。
通常口座へ移管してからの上昇分(利益)には、売却時に20.315%の税金がかかります。
また、NISAでは、非課税期間終了時の価格が「購入価格」と見なされることが特徴です。
たとえば、一般NISA口座で金融商品Aを120万円で購入し、非課税期間終了時には価格が200万円に上昇したとしましょう。この場合、200万円が「購入価格」と見なされます。
その後、価格はさらに上昇し、売却時には230万円だったとします。
すると200万円との差額の「30万円」に対して税金がかかります。
しかし、売却時に100万円まで下落していれば購入価格の200万円は下回ります。この場合、利益は発生していないため税金はかかりません。
このように、売却するタイミングによって支払う税金は変わってくるため注意しましょう。
ロールオーバーする
ロールオーバーとは、保有中の金融商品を翌年の非課税投資枠に移管できる方法のことです。
ロールオーバーすれば非課税期間を実質5年延長できます。つまり、保有中の金融商品から利益が発生しても、プラス5年は売却時に税金がかかりません。
では、ロールオーバーには、そのほかどんな特徴があるのでしょうか?
次項から、メリットとデメリットをご紹介します。
ロールオーバーのメリット
ロールオーバーには、次の2つのメリットがあります。
- 値上がりした場合もロールオーバー可能
- 残高120万円以下の場合は新規投資できる
値上がりした場合もロールオーバー可能
非課税投資枠の上限を超えていてもロールオーバーは可能です。
一般NISAの場合、年間の非課税投資枠の上限は120万円です。もし保有中の金融商品の価格が上昇して150万円となっても、そのまま翌年の非課税投資枠に移管できます。
残高120万円以下の場合は新規投資できる
120万円の非課税投資枠をすべて消費しなかった場合、残額分で新規投資が可能です。
仮に、ロールオーバーするのが80万円だとします。
すると、以下の計算式が成り立ちます。
【翌年の非課税投資枠120万円】-【ロールオーバー80万円】=40万円
翌年は40万円の新規投資が可能、ということです。
なお、残額分の非課税投資枠は、使わなかったとしても翌年には繰り越せません。
非課税投資枠は増やせるわけではないため、この点は覚えておきましょう。
ロールオーバーのデメリット
ロールオーバーのデメリットは以下の3つです。
- 非課税期間を過ぎたら課税対象
- 翌年度の非課税投資枠がなくなる可能性も
- 損益通算や繰越控除ができない
非課税期間を過ぎたら課税対象
ロールオーバーしなければ保有中の金融商品は自動的に通常(課税)口座に移管されます。そうなれば当然、移管後の上昇分(利益)は売却時に課税対象となります。
また、場合によっては損失が発生している状態で税金がかかる場合もあるのです。
120万円の金融商品Aを一般NISA口座で購入し、通常口座へ移管するときに50万円まで下落したとしましょう。この場合は「50万円」が購入価格と見なされます。
その後、売却時に80万円まで上昇していると、購入価格の50万円との差額「30万円」に税金がかかります。
しかし、当初は120万円で購入していたため、投資家にとっては損失が発生している状態です。
以上のように、損失が発生している状態でも税金を支払うケースがあります。
翌年度の非課税投資枠がなくなる可能性も
ロールオーバーする金額が120万円を超えている場合は、翌年の非課税投資枠はすべて消費してしまいます。そのため、翌年は新規購入ができません。
仮に、ロールオーバーする金額が150万円だとします。非課税投資枠の上限(120万円)を超えていても、ロールオーバー自体は可能です。そのため150万円すべてを翌年の非課税投資枠に移管できます。
しかし、120万円の非課税投資枠はすべて消費しているため、翌年の新規投資はできなくなります。
損益通算や繰越控除ができない
ロールオーバーする際に、保有中の金融商品の価格がNISA口座で購入したときより下がっている場合もあるでしょう。
通常の投資であれば、損失が発生しても損益通算や繰越控除をして節税につなげられます。しかし、NISAでは損益通算や繰越控除ができません。
損益通算とは、損失と利益を相殺する方法です。繰越控除とは、損失を翌年以降に繰り越して利益から控除する方法です。
NISAは投資利益が非課税になる分、損失は税務上「ないもの」と見なされます。
そのため、損失が発生した場合のデメリットは大きいと考えられます。
ロールオーバーの注意点
最後に、ロールオーバーするうえで覚えておきたい注意点を2つご紹介します。
- つみたてNISAはロールオーバーできない
- 同じ金融機関に新しいNISA口座の開設が必要
つみたてNISAはロールオーバーできない
ロールオーバーできるのは、「NISA(一般NISA)」と「ジュニアNISA」のみです。
「つみたてNISA」は非課税期間が最長20年間と設定されているため、ロールオーバーはできません。
また、制度上「一般NISAからつみたてNISA」や「つみたてNISAから一般NISA」といったロールオーバーもできません。
同じ金融機関に新しいNISA口座の開設が必要
年末時点で同じ金融機関に翌年分のNISA口座を開設しておかないと、ロールオーバーはできません。
ロールオーバーしたい方は、新しく口座を開設しておきましょう。
また、金融機関をまたいだロールオーバーもできません。すでにほかの金融機関で取引している場合は、「金融機関変更手続き」をしたうえで、翌年分の口座を開設してください。
なお、NISA口座を閉鎖してしまった方は、再開設が必要です。
まとめ
NISAは投資利益が非課税になるお得な制度です。非課税期間は決められていますが、延長したい場合はロールオーバーしましょう。ロールオーバーすれば非課税期間が実質5年延長されます。
ロールオーバーしなければ、保有中の金融商品は自動で通常(課税)口座に移管されてしまいます。そのため、いつまでが非課税期間なのかの確認もお忘れなく。また、ロールオーバーには一定の時間がかかることもあるため、手続きは早めに済ませるようにしましょう。手続きでわからないことがあったら、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)に相談するのも一つの手です。